海外27カ国における風力発電累計導入容量は2020年 471,014MW※(2008年比4.3倍)
政府が注力するアメリカの風力発電は2020年 149,300MWへ拡大(2008年比6.1倍)
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 阿部界 代表取締役)は、海外27カ国における太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、地熱発電、CHP(熱電併給:日本ではコージェネレーションと呼ばれる)、ヒートポンプといった新エネルギー(再生可能なエネルギー)の市場を調査した。その結果を報告書「World Wide 新エネルギーマーケット調査総覧 2009」にまとめた。
この報告書では、日本を除く、ヨーロッパ14カ国、北米2カ国、アジア8カ国、その他3カ国の計27カ国を対象に、各国政府の普及支援政策の状況と、新エネルギーの導入容量・発電量(ヒートポンプの場合は装置台数ベース)を市場とし、調査・分析、予測を行なった。
※世界的に中心である2.5MWクラスの風車 約188,405個分、40~50基の風車を持つウインドファーム約4,000施設分に相当。原発と比較すると日本の柏崎刈羽原子力発電所 7基の原子炉が発生する合計出力は、8,212MWであるから、柏崎刈羽原子力発電所クラスの57施設分に相当する。
◆調査対象27国
ヨーロッパ ドイツ、フランス、イギリス、スペイン、イタリア、ポルトガル、ギリシャ、オーストリア、オランダ、デンマーク、スウェーデン、ポーランド、チェコ、ロシア
北米 アメリカ、カナダ
アジア 中国、インド、フィリピン、インドネシア、タイ、韓国、マレーシア、ベトナム
その他 オーストラリア、ブラジル、南アフリカ
◆対象品目
太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、地熱発電、CHP、ヒートポンプ
◆注目諸国の動向
(1)ドイツ(累計導入容量ベース)
2008年見込 2020年予測 2008年 比
風力発電 23,447MW 54,000MW 230.3%
太陽光発電 5,487MW 12,000MW 218.7%
ドイツは、新エネルギーの普及支援にフィードインタリフ(FIT:固定価格買い取り)形式を採用している。1991年施行の電力買取法で電気事業者に新エネルギーの買い取りを義務付け、2000年の再生可能エネルギー法(EEG)により買い取り価格を大幅に引き上げた。これにより、風力発電、太陽光発電を中心に新エネルギー市場は飛躍的に成長した。再生可能エネルギー法では新エネルギーの導入目標を、2010年までに総発電電力量の12.5%、2020年までに少なくとも20%と定めているが、2010年までの目標は2007年に前倒しで達成している。
ドイツでは、風力発電、太陽光発電、バイオマス発電、地熱発電、CHP、ヒートポンプが導入されている。2008年見込みで風力発電がドイツの新エネルギー市場(ヒートポンプ除く)の72%、太陽光発電が同17%を占める。風力発電は、電力買取法の時代に他のエネルギーソースと比べコスト的なメリットが高かったため、早くから市場が立ち上がっている。風力適地の逼迫等から2003年以降市場の成長は鈍化していたが、EEG改定による買い取り価格上昇、洋上風力利用の立ち上げに伴い拡大し、今後も高いシェアを維持していくと見込まれる。太陽光発電は、EEG施行後、企業の積極的な設備投資などにより順調に市場が拡大している。2007年の累計導入容量の世界シェアは1位となった。日本が長らく太陽電池の生産と導入実績でトップの地位を守ってきたが、ドイツにその座を明け渡すこととなった。バイオマス発電は、2010年ごろまでは順調な拡大が予想される。しかし、食料問題が不透明であるため、長期的な伸長は続かないと思われる。CHPは、2000年のコージェネ法、2002年の新コージェネ法によりFITが充実したことで市場が拡大している。燃料価格の高騰により市場の伸びは鈍化したが、2009年には改定コージェネ法が施行されるため、市場の鈍化は抑えられると想定される。
(2)アメリカ(累計導入容量ベース)
2008年見込 2020年予測 2008年 比
風力発電 24,300MW 149,300MW 614.4%
CHP 75,498MW 80,000MW 106.0%
バイオマス発電 12,088MW 16,388MW 135.6%
2005年に成立したエネルギー基本政策がアメリカの骨子となっている。連邦レベルでの普及支援策としては、個人向け税制優遇、法人向け税制優遇、助成金、ローン、発電インセンティブがある。2008年10月に成立した緊急経済安定化法の「Division B - Energy Improvement and Extension Act of 2008」には、風力発電企業に対する優遇税制措置の1年間延長、住宅用および商用の太陽発電設備の導入に対する30%の優遇税制措置の8年間延長などが盛り込まれている。また、連邦レベル以外に、州、地域、電力会社、その他団体が主体となる普及支援策がある。
アメリカでは、CHP、風力発電、バイオマス発電、太陽光発電、地熱発電が導入されている。アメリカの新エネルギー市場で圧倒的なシェアを占めているのがCHPである。CHPは2008年見込みで新エネルギー市場の65%を占めている。しかし、CHPに次ぐ風力発電が著しく伸びており、2020年には風力発電が新エネルギー市場の60%近くまで上昇し、CHPが30%程度まで低下すると予測される。アメリカは国土が広く、政府も主要な新エネルギーとして風力発電の開発に意欲的なためである。バイオマス発電も拡大するものの、その伸びは僅かで、市場占有率は2008年見込みの10%から6%に低下するとみられる。太陽光発電や地熱発電は急速に成長しているため、2020年には市場占有率は高まるが、その割合は少ない。
(3)中国(累計導入容量ベース)
2008年見込 2020年予測 2008年 比
風力発電 9,000MW 50,000MW 555.6%
バイオマス発電 3,000MW 24,000MW 800.0%
太陽光発電 150MW 1,800MW 1,200.0%
中国では管理、発電価格・費用分担、中長期目標量などを定めた再生可能エネルギー法が2006年1月より施行されている。また、2007年9月に実施された「再生可能エネルギー中長期発展計画」では、新エネルギーの導入目標量・発電事業者の割当義務比率を規定している。中長期の導入目標量は、エネルギー消費全体に占める新エネルギーの割合を2010年に10%、2020年に15%としている。ただし、導入に対する支援策については詳細が決定しておらず、財政投入の増加と税制優遇を提示するに留まっている。
中国では、風力発電、バイオマス発電、太陽光発電が導入されている。風力発電が近年急速に拡大しており、当初目標としていた2010年の累計導入容量5,000MWは、2倍の10,000MWへと上積みされた。風力発電の導入が急速に進んだ理由は、太陽光発電等と比べて発電コストで風力発電が有利であるためである。今後も風力発電の拡大は続くと見られ、市場は2020年目標の30,000MWを大幅に上回る50,000MWにまで拡大すると予想される。バイオマス発電は、2020年の目標値が30,000MWに設定されているものの、具体的な普及支援が決定していない状況下では、急速な市場拡大とはならず、24,000MW程度に留まると予想される。太陽光発電は、市場の立ち上がりが風力発電と比較して遅れており、累計容量が1,000MWに達するのは2012年以降になると予測される。
◆調査結果の概要
2008年見込 2020年予測 2008年 比
太陽光発電 10,096MW 48,725MW 482.6%
風力発電 110,539MW 471,014MW 426.1%
バイオマス発電 36,860MW 91,910MW 249.3%
地熱発電 7,091MW 20,560MW 289.9%
CHP 86,898MW 94,800MW 109.1%
(1)太陽光発電
海外27カ国を対象とした太陽光発電の市場は、2008年に10,096MWが見込まれる。世界的に大きな成長が見込まれる市場である。2008年の見込みでドイツ(市場占有率54%)、スペイン(同20%)、アメリカ(同11%)の順に市場が大きい。これらの国は比較的早期に太陽光発電に取り組んでいるため、成長率はそれほど高くはないが、2020年においても上位に位置すると予測される。また、これらの国に次ぐ市場規模で、市場成長率が高いのがイタリア、フランス、イギリス、中国である。特にイタリアは、2020年にはスペインに次ぐ市場規模3位に位置すると予測される。アジア諸国では中国の他、インド、韓国の市場が比較的大きく成長率も高いが、それ以外の国は概ね市場が小規模である。
(2)風力発電
海外27カ国を対象とした風力発電の市場は、2008年に110,539MWが見込まれる。風力発電は、太陽光発電と比べて比較的早期に取り組んでいる国が多い。2008年の見込みで最も市場が大きい国はアメリカ(市場占有率22%)である。今後もアメリカの高成長が予想されるため、アメリカが牽引し風力発電の市場は拡大すると予測される。アメリカに次ぐのがドイツ(同21%)、スペイン(同15%)である。以下市場が大きく、市場成長率も高いのがインド、フランス、イタリア、オランダ、イギリス、カナダ、中国である。ベトナム、タイの市場成長率は極めて高いが、2020年でもまだ市場は小規模である。
(3)バイオマス発電
海外12カ国を対象としたバイオマス発電の市場は、2008年に36,860MWが見込まれる。その内、最も市場が大きい国はアメリカ(市場占有率33%)であり、ブラジル(同11%)、スウェーデン(同11%)、ドイツ(同10%)と続く。これらの国に次ぐ市場規模で、市場成長率が最も高い国は中国である。中国は2020年に向け市場が8倍に拡大すると予測されることから、アメリカを抜いて最大市場になる。ブラジル、インド、スペインの市場成長率も高く、今後が期待される。
(4)地熱発電
地熱発電の市場は、2008年に7,091MWが見込まれる。海外27カ国を対象としたが、2008年に市場形成しているのは10カ国に留まる。その内、最も市場が大きい国がアメリカ(市場占有率42%)で、フィリピン(同29%)、インドネシア(同16%)、イタリア(同12%)と続く。アメリカは連邦地熱エネルギープログラムや連邦ジオパワー・ウエスト・プログラムなど、技術開発や地質調査費用などを助成するための予算を計上して積極的に取り組んでいる。フィリピンやインドネシアは環太平洋火山地帯に位置していることから歴史的に地熱利用が多く、国産エネルギー100%を目指す上でも重要な位置付けとなっている。一方、2008年ではまだ市場が僅少と見られるオーストラリアは、地表から比較的浅い3-5km程度の深度に存在する高温発生花崗岩のエネルギーを利用したHot Dry Rock(HDR)と呼ばれる地熱発電の技術開発を進めている。現在は実用化に向けた調査段階が殆どであるが、政府からはHDRに対する開発補助があり、開発に意欲的である。2010年頃までを目処にパイロットプラントとして40MWを導入、以降2021年に1,321MW、2030年に2,760MWの導入を目指している。
(5)CHP
アメリカ、スペイン、イギリスを対象としたCHPの市場は、2008年に86,898MWが見込まれる。その内、アメリカが87%を占めており、スペイン、イギリスは各々6~7%に留まっている。アメリカは1980~1990年代に掛け、連邦及び一部の州政府の政策により他国に先駆け導入が進んだが、2005年以降新規導入が少なく、横ばいが続いている。スペインは1990年頃から導入が始まったが、2000年に入り電力自由化による電力価格の下落、燃料価格の高騰などから年間導入件数は数件に留まっている。イギリスも2000年から普及政策を実施しているが、スペイン同様電力価格の下落や燃料価格の高騰などから伸びは鈍化している。
World Wide 新エネルギーマーケット調査総覧 2009
世界約27ヶ国を対象に、国別の新エネルギー・再生可能エネルギー機器のマーケット、エネルギー関連政策、普及支援策、主要メーカーなどを明確化します。調査対象機器は、太陽光発電、風力発電、地熱発電、バイオマス、コージェネレーション、ヒートポンプの6品目です。総括編ではワールドワイドのメーカーシェアや、エリア別機器マーケットなど対象機器のグローバルな動向を明確化します。 マーケット情報
■刊行日 2008/11/21 ■税込価格 105,000円(本体 100,000円) ■カテゴリー エネルギー
https://www.fuji-keizai.co.jp/index.html
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